ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
「お前は"サファイア"の当主で、そして大学生で。

守りたいものも、守らないといけないものも、きっと他の人よりたくさんあるんだろう。


だが、一番大切なものを守れなければ意味はない。

失くしてしまえば、二度とそれは戻らない」


「お前なら分かってるだろうが」と付け加えると兄は背を向けた。

言いたいことだけ言って去っていく、自分勝手な兄を思わず呼び止める。


「考えなくてもいい。話したことに意図はない。お前が必要のないことだと思えば、忘れればいい。

とりとめもない兄の独り言だと思っていればいい。


だが、考えて選ぶのは、


お前だ、翔太」



兄は足を止めるとこっちを振り返ることなくそう言った。


「おい、どこへ行く」


そう声をかけても兄はそれ以上何も言わなかった。

けど一つだけ分かった。


兄だってそうなんだ。

きっと大切なものがたくさんあって、その中でも一番大切なものを守ろうとしている。

だから兄は今ここにいて城で仕えているんだ。



「…死んでねえじゃねえかよ」


憧れた兄は死んだと言っていたけれど、そうではなかった。

憧れたあの日のまま、ここにあった。


思わずふっと笑みがこぼれたときだった。

脳内に鋭い声が響き渡る。



「港町アクアゲートに魔物が出没!おそらく聖獣だと思われます!」



テレパスで聞こえたその声は切羽詰まっていて、俺はすぐに兄と顔を見合わせる。

そして頷くとすぐに杖を掲げた。


「"モーメント・ムーブ"!」


行先はアクアゲート。

守りたいものはたしかにいくつもあるけれど、その中でひときわ輝く笑顔が脳裏に浮かぶ。


お前と共に守ると決めたものを俺が守れなかったら、俺はこの先どうやってかっこつけたらいいんだろうな。


…なあ、由良。



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