ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
すると彼は、あれを見て、と空を指さした。私はその指の先を目で追った。
「…きれい」
それは初めて見る光景だった。
青空に7色の光の橋が架かっている。
これほどに美しい景色があるのだと私は初めて知った。
「これは虹というんだよ」
「にじ」
言葉を繰り返し呟く。なんて響きの美しい言葉なんだと思った。
けれど虹はやがて消えてしまった。
それを惜しむと「なくなってしまうから美しいんだよ」と彼は優しく言った。
その瞳が空に負けない美しくて優しい青色をしていた。
穏やかな陽が降り注ぐ中、私は今までにない幸福を感じた。
きっと一生忘れられない出来事になる。
直感でそう思った。
けれど残念なことに、彼とはすぐに別れることとなった。
彼を呼ぶお婆さんの声が遠くから聞こえてきた。
「もう、行かなくちゃ」
彼は呟いた。
立ち去ろうとするその手を咄嗟に掴む。
「どうしたの?」
彼は不思議そうに、困惑したように尋ねた。
私は何も言えなかった。
色んな感情が沸き上がっている心の内を説明するには言葉が足りなかった。
ただ、このまま別れたくなかった。
この手を離したら、きっともう二度と会えないから。
『だいじょうぶ』
彼は手を重ねて黙りこくる私に微笑んだ。
「きっとまた会えるよ」
だから、笑って。
それが最後の言葉になった。
手は離れ、姿は見えなくなった。
それっきり、彼と会うことはなかった。
私は会えなくてもいいと思ってた。
記憶の中に彼がいるなら十分だと。
だけど、そうも言っていられなくなった。
私の人生は、もうすぐ終わる。
タイムリミットが迫っている。