ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
「入り口はこちらでございます。こちらは正面玄関、主に他国の王族など位の高い来賓の方が使われるところでございます」
使用人の使う入り口も別にございます、と説明されて、あたしは「じゃあ、そちらから入れば良いのですね」と答えた。
するとクリスさんはにっこり笑って首を振り「お二方は大丈夫ですぞ」と言った。
「お二人は"サファイア"と"ガーネット"の方々。我々も軽く扱うことなどできませぬ」
「さあさ、どうぞ」と案内されて王城内に足を踏み入れる。
その瞬間に感じた、
「え?」
ものすごい、殺気立った気配。
思わず足を止めた。
周りにいるは、翔太、クリスさん、衛兵の人々。それ以外の気配は感じられない。
誰から、どこから?
俯いて視線だけ動かして探ろうとする。
どうして?
どうして王城内でこんなにも息が苦しくなるほどの殺意が向けられているの?
この殺意の矛先は、誰?
「どうかされましたかな?」
クリスさんが振り返って不思議そうな顔をする。
クリスさんは、気づいてない?
「い、いえ、何も」
「それならば良いのですが」
クリスさんはくるりと向きを変えると、再び歩き出した。どうやら何も感じていないらしい。
それならあたしが感じたこれは、ただの勘違い?
「なあ」
翔太は小声であたしに呼びかける。
その声は静かだったし、たったそれだけの言葉だったけれど、なにを考えているか分かった。
あたしの勘違いではなかった。
翔太も感じていたんだ。
「これは、俺の予感だけど。
この依頼、きっと大変になる」
この時ただの予感でしかなかったこの言葉は、やがて現実のものとなる。
あたしがそれを知るのはもう少し先の話だ。