ド天然!? 魔女っ子の秘密【2】
「え?」
「このクオート、作り方がちょっと複雑なのですよ。小麦を混ぜる回数も決まっていますし、焼く時間も秒単位なのです。そんな複雑なクオートを作れる方はその手間暇を惜しまない優しい方しかいませんもの」
翔太は目を見開いた。それからクオートに目を落として、もう一度姫を見た。
「ありがとう、ございます」
心から嬉しそうな翔太の笑顔に、あたしは胸がぎゅっと締め付けられた。
翔太がもう二度と出会えることのないと思った味に、おばあさんの味に出会えたんだ。こんなに嬉しいことなんてないだろう。
翔太が嬉しいのなら、あたしだって嬉しい。
そのはずなのに。
なんで、嬉しいって心で100パーセント思ってあげられないんだろう。
なんで、嬉しいって思う気持ちと同じくらい苦しい気持ちになるんだろう。
なんで、嬉しいことのはずなのに。
なんで、喜んであげられないんだろう。
あたし、こんなに嫌なヤツだった?
あたし、こんなに人の喜びを喜んであげられないようなやつだった?
他の誰でなく、翔太のことなのに。
「由良さん?」
晴人さんの言葉ではっと意識を戻す。
「どうかされました?」
「あ、いえ、何も」
あたしは笑った。
「すごくおいしいです」
クオートに手を伸ばす。
優しい味が苦しいくらいに喉にまとわりついた。
「このクオート、作り方がちょっと複雑なのですよ。小麦を混ぜる回数も決まっていますし、焼く時間も秒単位なのです。そんな複雑なクオートを作れる方はその手間暇を惜しまない優しい方しかいませんもの」
翔太は目を見開いた。それからクオートに目を落として、もう一度姫を見た。
「ありがとう、ございます」
心から嬉しそうな翔太の笑顔に、あたしは胸がぎゅっと締め付けられた。
翔太がもう二度と出会えることのないと思った味に、おばあさんの味に出会えたんだ。こんなに嬉しいことなんてないだろう。
翔太が嬉しいのなら、あたしだって嬉しい。
そのはずなのに。
なんで、嬉しいって心で100パーセント思ってあげられないんだろう。
なんで、嬉しいって思う気持ちと同じくらい苦しい気持ちになるんだろう。
なんで、嬉しいことのはずなのに。
なんで、喜んであげられないんだろう。
あたし、こんなに嫌なヤツだった?
あたし、こんなに人の喜びを喜んであげられないようなやつだった?
他の誰でなく、翔太のことなのに。
「由良さん?」
晴人さんの言葉ではっと意識を戻す。
「どうかされました?」
「あ、いえ、何も」
あたしは笑った。
「すごくおいしいです」
クオートに手を伸ばす。
優しい味が苦しいくらいに喉にまとわりついた。