近くて遠い
「…さぁ。起きよ。」

自分の部屋をあとにして、1階へ行くと、妹の尋美(ひろみ)と弟の直也(なおや)が「おはよう。」と言う。

「おはよう。お兄ちゃんは?」

兄の武(たけし)の姿がない。

「お兄ちゃんなら、駅に行ってくるって出かけたで。」
直也が説明する。

「ふーん。」

私はまた2階に戻った。
そしてぼーっとする。
この時間が好き。自由になった気がする。私だけの時間だから。
ときどき凄まじい不安が襲う。
怖くて、怖くて涙がでる。小さい頃からだ。
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