最後の恋愛Ⅱ
「や、大和!」

ぜいぜいと息を上げた大麦の声に、思わず振り返った。

ん?

何で追いかけてきたんだ、大麦。

私は化粧のことなどおかまいなしに涙を手の甲で拭って言った。

「あ、私のことは良いんで。彼女のところに行ってください。」

そうだよ

私よりもよっぽど可愛くてよっぽど綺麗で若くてボンキュッボンの女の子のところへ行くがいい!

「大丈夫です、私、まだ所長のこと、好きにはなっていませんから、お試し期間が終了するだけです。」

そう言って、車道を見遣り手を挙げる。

「あんなキスしてきといてどういう神経してんだって思うし、はじめての女じゃなかったら何してもいいと思ってんのかって殴って蹴飛ばしてやりたいくらいですけど、仕事場の上司ですから自重しておこうかと思います。」

ボロボロと涙が零れる。

くそっ

早く来い!

タクシー!

「大和、聞けって!」

「いいえ、何もお話することはありません。これは全て一時の気の迷いです。私は、所長のことなんてどうでも良いんですから。」

そうだよ、どうでも・・・

強引でマイペースで・・

アマアマな・・・
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