最後の恋愛Ⅱ
見事にシーンと静まり返る場内。

う、気まずい。

しかもこれ、私に言ったんだ。

別れてるから、安心しろって―ことだ。

「え・・・」

みんな呆然となってる中、柊がへらっと作り笑って言う。

「あ、これも照れてるってことですかね?」

そりゃそうだよね・・・

ま、そうとりつくろうしかないよね?

大麦ぃ・・

場所を考えろよ。

女心を考えろよ・・・

彼女が、ここでわざわざ公言したのは、そう言われたくないからに決まってるだろ~!

如月は笑顔を顔面に凍てつかせて、引きつって呟いた。

「は・・・隼人さん・・・」

大麦はくるりと背中を向けて自分の席に向かう。

う・・

大丈夫なのかな、この人、本社のえらい人の娘なんだよね?

あ~もうっ

何で、私がこんなやきもきしなきゃならないんだよ!

大体大麦、偉い人の娘なんかに手を出すからこんなことになるんだよ

この節操ナシが!

「私、別れませんからっ!」

私が何かを喋り出す前に、如月は怒鳴るように言うと、脱兎走り出した。

ああ、うう・・・

そりゃ、いられないよね

気持ちが分かってしまうのは、女同士だからだろうね。

ああ・・・

「ほ、ほらほら、いつまでつっ立ってるの。仕事仕事!始業チャイムもう鳴ったよぉ!」

私はパンパンと手を打って言った。

いたたまれない

・・・いたたまれないよ
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