エリー
カチカチ、カチカチ....
時間はそのまま、止まることを知らずに進み続け、朝となった。
シルバは、くせっ毛の茶髪を軽く手で整えてから、適当な服に着替えた。
そして、エリーはきっとまだ寝入っているであろうダイニングルームへ足を運ぶ。
シルバは、ソファーに目を向けた。
「....ん? いない」
空っぽのソファーを見詰めながら彼は、ぽつり呟いた。
「一体、どこへ行ったんだ....」
一瞬、何年もの間女性と接触をしていないせいで頭がおかしくなったのかとも思ったが、それではおかし過ぎる。
ソファーに乱暴に置いていた毛布は、綺麗に畳まれており、テーブルの上からは懐かしい香りが漂ってくる。
見ると、そこに置かれたものはシルバが子供の頃、朝食によく口にした目玉焼き、お焦げがほんの少しついたご飯、まだ温かいお味噌、ひんやりと冷たいブドウジュースだった。
確かに、そう言えば祖母が送ってくれた食い物を何日か前に、適当に冷蔵庫の中へ詰め込んでいた。だが、シルバは料理を作れない。だから、すぐに食べられる卵と豆腐以外はそのまま保存しっぱなしであった。
「....ありがたい」
シルバは、思わず笑みを浮かべた。