みかづきさんと僕
『ふ〜ん。なるほどねぇ。』
何故かしつこく″お食事会″という言葉を主張するなないろの説明を聞いた露季は、流れるようにふらりと僕にその瞳を向けた。
「露季は何やっても性的ダネ。」
『あ?』
「ナンデモナイデス。」
この場で不用意な発言は控えようと思う。
『まぁ、いいや。なぁ、みつあき君よ。』
「(…君?)はい。」
『行け。その″お食事会″』
「……。」
「っ、はぁああぁあ!?!?」
『いよっしゃああぁあ!!!』
なないろうるっせえ!
「嫌だよ!僕3日前にもこいつに無理やり連れて行かれてるんだ!」
あの日の″お食事会″はまさしく悪夢。
露出の多い服を着て僕の腕にわざと胸を押し当ててくる化粧の濃い女。鼻に残る香水の香り。甘ったるい猫撫で声。
それは全部、全部。
僕を不愉快にさせただけだった。
トドメにその女は僕の手を握ると耳元で、
『ねぇ……ホテル、行こ?』
と、囁いた。
ぞわっと背筋が凍った。あんなに鳥肌が立ったのは小学生の頃、目の前にゴキブリが飛んできた以来だ。
僕は引き攣る顔で何とか笑顔を作り、重ねられた手をそっと離してお金を置いて一目散に店から出たのだった。