みかづきさんと僕
「つゆ…、」
『こんばんは〜。』
「!」
露季に声をかけようとした瞬間に、落ち着いた女性の声が個室に響いた。
『お疲れ〜!』
『ごめんねなないろ君。遅くなって。』
『いやいや、まだ時間じゃないし。』
僕は緩やかに交わされる2人の会話を聞きながら、初めまして〜、なんて言って個室に入ってくる女性陣にあ、どうも…と気弱に頭を下げる。
うん、確かに良識がありそうな人たちに見える。
僕はこの合コンを勧めてくれた露季に再度視線を向けた。…が。
『………。』
『………。』
なぜか露季は最初に入ってきた女性のすぐ後ろにいた小柄で可愛らしい女性を黙ったまま凝視していて。
「つ、露季…?」
彼女も彼女でなぜか露季を凝視…、というか驚愕したように大きな瞳をこれでもかと見開いていた。
あれ、なんだか彼女の顔色が心なしか青ざめているような…。
『…っ……、』
『こんばんは。初めまして。』
彼女の声はとても小さくて、僕には何を言ったのかは全く聞こえなかったけど、不自然に言葉を遮った露季にまた首を傾げる。…まって露季、なんか笑顔怖い。
『なんか変だよね、露季。』
「やっぱそう思う?」
僕は隣に座る深町と顔を見合わせて、強く頷き合った。
僕達がコソコソと話しているその間に、彼女は自分の後ろに続く友人に「ゆあ?」と呼びかけられ慌てて座敷に座る。
そこでやっと全員揃い僕達の″お食事会″と言う名の合コンがスタートしたのだった。