みかづきさんと僕
それからはずっと上の空で、話を振られてもはい、とかそうですね、なんて的を得ない返答ばかり。
なないろからも「もうおねむでちゅか?」なんてそりゃもう普段なら1、2発殴ってるレベルの気持ちの悪いことを言われても。
「……うん。」
『は?』
こんな感じ。
『え?なにお前…酔ってんの?』
「……そうかも。ごめん、ちょっと外出てくる。」
『外、気を付けなよ。』
「ありがとう深町。」
…個室を出る瞬間、ちらりと榊さんを見ると、彼女は控えめに笑いながら露季と楽しそうに話していて。
「っ…。」
僕はこの得体の知れないモヤモヤとした気持ちを胸に抱えながら、覚束ない足取りで店を出た。
外はすでに夜独特の危うさを色濃く漂わせ、街ゆく人の喧騒が鼓膜を震わせる。
僕はふらふらと歩きながら店のすぐ側にある街路樹に背を預け、はぁ、と重苦しい息を肺から吐き出した。
う〜ん…、これはたぶん…。
「独占欲…だよなぁ。」
彼女が露季に笑いかけた、ただそれだけのことだったのに。
僕だけを、見て、笑って。
…————僕だけのものに、なって。
そんなドロドロとした気持ちが溢れ出しそうになった。
「最低だ…。」
勝手に嫉妬して、自己嫌悪に陥って。こんなぐちゃぐちゃな気分は初めてだ。