みかづきさんと僕




正直僕は戸惑っていた。だって、こんなこと初めてで、どうしていいかわからない。


暫く瞑想するように瞳を閉じる。


…すると。



『つ、ゆき君…っ!待って!』

『黙って。』


…………え?


「露季…?」


店から突然出てきたのは露季と女の人…確か″ゆあ″さん?で、僕は思わず街路樹から背を離す。


僕の声に気付いた露季は、僕を一瞥すると感情の読めない声音で。


『みつあき、俺たちこのまま帰るからさ、これなないろに渡しといて。』


そう言って今日の参加費を僕に渡した。


『2人分。足らなかったらまた明日言ってよ。』

「わ、かった…。」


ちらり、と。視線を2人に向ける。


僕たちが言葉を交わしている間もずっと、露季はゆあさんの手首を掴んでいて、なぜか彼女は必死にその手から逃れようと躍起になっていた。


僕が呆気に取られていると、露季は彼女の手首をグイッと引きそのまま耳元に口を寄せると何かを囁く。


『…、っ……。』


途端に抵抗することをやめて強張った表情になった彼女を見て、嗚呼、なるほど。と何となく露季と彼女の関係に気付いた。


だからここに来てからずっと機嫌が悪かったんだな、露季のやつ。


ゆあさんがあの場に来ることになった経緯はわからないけど、これでいつもなら滅多に参加しない合コンに露季が行くなんて言い出したのかがわかった。



そっか、2人は…———。



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