みかづきさんと僕




みかづきさんは普段、カラーコーディネーターとして働いている。


彼女は業界の中では結構有名らしく(詳しくは照れて教えてくれない)、大きな仕事を任せられることもしばしば。



今だってほら、恋人に背中を向けてパソコンとファイリングされた資料を交互に見比べては睨めっこ。みかづきさんそんな険しい顔しなくても…。



ソファに寝転がっている僕は、そんなみかづきさんの険しい横顔をただ見つめることしかできない。



いや、本当はその眉間に寄ったシワを指で伸ばそうかとしたけど、何かに気付いたみかづきさんに眼光鋭く睨まれて不発に終わった。怖い。



(…暇、だなぁ。)



パソコンに向かう彼女の背中はずっとずっと小さくて、ミディアムボブの髪の毛がふわふわと揺れていた。



「………みかづきさん。」

『……。』

「みかづきさん。」

『なぁに。』







みかづきさん、こっち向いて下さい。




「呼んでみただけ、です。」





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