みかづきさんと僕
「えっと、あの…。」
何か!何か話さないと!!
なんて。焦れば焦るほど言葉というものは出てこないもので。
『……。』
「……。」
む、無言!!!
榊さんの奇怪なものでも見るような視線が痛いっ。そろりと目線を逸らし、どうしようと考えを巡らせていた時、先に言葉を発したのは…。
『ねぇ、見て…月が綺麗。』
彼女の方だった。
「え!?」
『ふふ、驚きすぎ。』
風で流れた髪を手櫛で直しながら可笑しそうに微笑する彼女にまた一つ、音が鳴る。
ドクン、ドクン。と。
苦しいのに、心地よい。
それは、はじめての感覚で。
「……あの。」
『なぁに?』
小首を傾げるその仕草が。
ゆったりと響くその言の葉が。
月明かりに照らされるその微笑みが。
「僕のこと、好きになってくれますか?」
好きだと、思った…————。
『…………い、きなり。』
「すみません。……でも。」
戸惑いながらも真っ直ぐ見つめる彼女の瞳に、僕が映り込む。
「あなたに、一目惚れしました。」
恋に落ちるって、きっと。
こういうことだ。