みかづきさんと僕
「み、みみみみみかづきさん。」
『私の名前に″み″は一つよ。』
「みかづきさん!」
『はい。』
僕に抱き締められたまま身体を少しそらして上目使いで小首を傾げるあざといみかづきさん。クッ…可愛い…天使。
目眩がしそうなほどの可愛さに目頭を押さえるが、『キモチワルイ』と言われて真顔に戻った。
「………。」
『本題、早く。』
まさかそんな単語で追い詰められるとは思わなかった。嗚呼、逃げ出したい。
抱き締めている力を緩めるとみかづきさんはそっと僕から離れた。ビー玉のように綺麗な彼女の瞳を見つめて僕は意を決する。
「………怒っていますか?」
『主語。』
「……、…みかづきさんは僕のことで怒っていますか?」
『……。』
嗚呼、黙っちゃった。
表情が全く変わらないみかづきさんに僕の心拍数は上昇の一途を辿る。もちろんトキメキとかでなく。
じわりじわりと真綿で首を絞めつけられるような感覚に拳をぎゅっと握った。が、その手にそっと重なったのは小さな小さな彼女のそれ。
「みかづきさん…?わ、ちょっと…!」
何も言わずに僕をグイグイと引っ張ってキッチンへ向かうみかづきさん。なんだなんだ!?