不自由恋愛シンドローム
暗くなり始めた準備室。
電気をつける事も忘れて、咲はある事を思い出していた。
―先生は俺の、神様だから・・・
色素の薄い髪の毛や肌の色や瞳の色。
中性的で綺麗な顔立ちの男の子だった。
友達とグループを作ったり、笑って喋っているところを見た事がなく
いつも静かに、気配を消したようにひっそりと教室にいた。
目立ってもおかしくない容姿を、必死で隠しているような印象さえ受ける。
成績はとても良く、常に学年でもトップクラス。
けれど、勉強を必死にしているようにもまた、見えないのだった。
不思議な子。
咲の中でそれ以上の気持ちは無かった。
特別な接点も、何も無い。
授業で週に数時間、同じ空間にいるだけ。
まともに会話をした事も無かった。
それなのに、ある日突然言われたのだ。
「先生は、俺の神様だから」
言っている意味が、すぐには理解出来ない。
返す言葉の見つからない咲に、続けて言う。
「だから先生の望む事はなんでもするよ」
感情の読み取れない表情。
吸い込まれるように澄んだ瞳で見つめられると
時間が止まったように感じた。
「そんな・・・・望む事なんて・・・・・」
何も無い。
後悔したのは少し後だった。
それが拒絶の言葉だったのだと気が付いたのはもっと後で。
しばらくして、彼は学校に出てこなくなった。
二度と登校する事無く、退学となった。
あの時、他に何か別の言葉をかけていたら。
意味の無い事を考える。
何も無い。
あなたと私の間には何も無い。
彼を傷つけたのはその言葉だったのだろうか。
あの時の自分にできる事は何も無かった。
ましてや彼を救う事なんて。
何度自分に言い聞かせても、それは気休めにもならない。
咲は科学準備室の電気を付けた。
手に持っていたコーヒーは完全に冷めてしまっている。
思い出すと苦しくなる記憶である事は間違いないのに
なぜ急に彼の事を思い出したのか。
咲にも分からなかった。
電気をつける事も忘れて、咲はある事を思い出していた。
―先生は俺の、神様だから・・・
色素の薄い髪の毛や肌の色や瞳の色。
中性的で綺麗な顔立ちの男の子だった。
友達とグループを作ったり、笑って喋っているところを見た事がなく
いつも静かに、気配を消したようにひっそりと教室にいた。
目立ってもおかしくない容姿を、必死で隠しているような印象さえ受ける。
成績はとても良く、常に学年でもトップクラス。
けれど、勉強を必死にしているようにもまた、見えないのだった。
不思議な子。
咲の中でそれ以上の気持ちは無かった。
特別な接点も、何も無い。
授業で週に数時間、同じ空間にいるだけ。
まともに会話をした事も無かった。
それなのに、ある日突然言われたのだ。
「先生は、俺の神様だから」
言っている意味が、すぐには理解出来ない。
返す言葉の見つからない咲に、続けて言う。
「だから先生の望む事はなんでもするよ」
感情の読み取れない表情。
吸い込まれるように澄んだ瞳で見つめられると
時間が止まったように感じた。
「そんな・・・・望む事なんて・・・・・」
何も無い。
後悔したのは少し後だった。
それが拒絶の言葉だったのだと気が付いたのはもっと後で。
しばらくして、彼は学校に出てこなくなった。
二度と登校する事無く、退学となった。
あの時、他に何か別の言葉をかけていたら。
意味の無い事を考える。
何も無い。
あなたと私の間には何も無い。
彼を傷つけたのはその言葉だったのだろうか。
あの時の自分にできる事は何も無かった。
ましてや彼を救う事なんて。
何度自分に言い聞かせても、それは気休めにもならない。
咲は科学準備室の電気を付けた。
手に持っていたコーヒーは完全に冷めてしまっている。
思い出すと苦しくなる記憶である事は間違いないのに
なぜ急に彼の事を思い出したのか。
咲にも分からなかった。