不自由恋愛シンドローム
慧は答えない。
「待てよ」
大きい歩幅で高平が近づいてくる。
「待てって言ってるだろ!」
スマホを持つ慧の腕を掴もうとするが、するりとかわされる。
「先生がどうなってもいいのかよ?!」
「・・どういう意味だよ」
「とりあえず電話しまえよ」
「・・・」
「先生の身体は大丈夫だから」
「信用できるわけないだろ」
「俺だって別に先生殺そうとしてるわけじゃないんだ。マジで寝てるだけだから・・・・俺んち病院なの、知らない?」
聞いた事があるような気もしたが、分からない。
「嘘じゃないって。だから鎮静剤とか睡眠薬とか、結構手に入るわけ。ま、バレたらヤバイけど・・それで寝てるだけだから。身体には無害な量しか飲ませてないしそのうち目が覚める」
「信じろって?」
「ま、そこは信じてもらうしかないけど・・・・でもさ」
くっくっ と、高平が押し殺したように笑う。
「・・・なんだよ」
「なんか、テンパってる白河くんて新鮮でさ」
「ふざけるなよ」
今までに出したことが無いくらい怒気のこもった声が出た。
「ふざけてないよ、ただよく考えた方がいいって事・・・・・・ここにさ、どうやって来たの?」