不自由恋愛シンドローム
高平は楽しそうに続ける。
「この部屋、誰の名前で取ってあった?」
高平の言わんとしていることの核心が分かる。
「舞嶋さんて、結構有名なモデルだよね?別に彼女に興味なんてないけど・・でも、興味無くても知ってる。チラっとCMとかに出たりもしてるもんね」
「高平・・・」
「救急車なんて呼んだらまあ・・・警察沙汰だよね。俺が退学になったり、警察につかまるだけならいいけどさ、舞嶋さんがこの件に関わってるってそれちょっとしたスキャンダルなんじゃない?」
無駄だと思いつつも口を開きかけるが、全て計算している高平にさえぎられる。
慧にも分かっていた。
姫華がからんだ時点で、元々少ない選択肢がいくつも無くなる事を。
高平はそうなったら必ず自らマスコミにリークする。
騒ぎを大きくすればするほど、咲にとっては・・・・
「まあ、そうだよね・・・彼女は自業自得だし、俺もだけど・・でも、それでも先生無傷でいられる訳ないよね。てかたぶん学校になんていられないよね」
結局、慧は高平の言う事を信じる他無いのだった。
「はずせよ、これ」
高平は、そう言う慧を計るように見返す。
「はやく」
力づくでも、とにじり寄った慧に両手を上げると、ジャケットの内ポケットから鍵を出した。
慧はそれを奪い取ると、咲にかけられていた手錠を外した。