不自由恋愛シンドローム
「耐性ないからかな・・・・良く効いてるみたいだね」
高平は咲の頬を撫でながら言った。
姫華は自分のバッグを手にとって、もう部屋を出て行こうとしている。
「先輩、先生をどうするつもりなの?」
「そりゃあ、もちろん殺しはしないよ」
「・・・・いいけど。私と慧の前からいなくなってくれればそれで」
「それは約束するよ」
慈しむように咲を見つめたまま、自分を見ようともしない高平。
姫華はふと立ち止まり、問いかける。
「・・・この人の、どこがそんなにいいの?」
高平はようやく姫華を見遣り、そしてふっと笑う。
「そうだね・・・・多くの男は君の方を選ぶんじゃないかな・・・だけど」
「なに?」
「恐らく君の白河くんも、君より先生がいいんじゃないかな?そういう意味では、俺と白河くんは気が合うと思ってる。だけど、どんな手段を使っても先生を譲る気は俺には無い」
そこまで言ってははっと笑う。
「そうだね、そういう意味では舞嶋さん、君とも気が合うんだろうね」
「質問の・・・・・答えになってない」
高平は姫華に不敵な笑みを投げかける。
「そんなに不安?」
「何が?」
「先生の存在が、だよ。普通に考えたら先生よりも君のほうがよっぽど多くのものを持ってるはずだよ。先生は・・・」
そう言って高平は咲を姫抱きに抱えあげる。
「君の敵としたら役不足過ぎる。そうは思わない?たかが高校の科学教師で、地味で目立つ訳でもない。舞嶋さんには若さも、モデルをやるほどの美貌もある。成績だっていいし、君は賢い。そうだろう?」
「・・・・何が言いたいの」
高平は咲を寝室まで連れて行き、ベッドの上に寝かせる。
それからリビングに戻り、冷蔵庫の中のミネラルウォーターを取り出して飲んだ。