不自由恋愛シンドローム
「君は完璧を求めてる」
「完璧?」
「そう、完璧な自分。それから、完璧な恋人」
「・・・・・・」
「一点の曇りも無い、愛を。そうじゃなきゃならないんだ、君の想いこそ、一点の曇りも無いんだから」
「それの・・・・何がいけないのよ」
「いや、完璧を求める事は誰にでも出来るものじゃない。だからこそ人は君を美しいと思うんだ。いつまでも、君を見ていたくなるんだ。だけど、それってつまらないと思わない?
君は完璧を求める才能に恵まれ、限りなく完璧に近づく事が出来るだろう。だけど、その後は?一度完成してしまえばそれまでさ。棚に飾って、眺めて、いずれ忘れられていく」
「先生は、不完全だっていいたいの?だから先生がいいって?」
「そう。君はいつだって主役だ。主役以外出来ない人間だ。眩しいスポットライトを浴びて、舞台の真ん中に立つ事が出来る。だけど先生は、間違っても主役なんてやらない。それどころか舞台にすら立とうとしない。だけど、それがいいんだ。みんなの主役なんて、俺は要らない」
「慧は・・・・慧がそうとは限らない」
「まあ、なんと思ってもいいけど・・・・・じゃあ逆にさ、舞嶋さんは白河くんのどこがいいわけ?そりゃああいつの外見が女子ウケするのは、俺から見ても良く分かるけど・・・
でもそれって舞嶋さんにとってはあんまし意味ないのかなって。見た目重視なら、君は同業者で選び放題でしょ」
「誤解しないで。私は慧が例え今みたいな外見じゃなくても・・・・ううん、むしろ慧がもっと平凡な外見でいてくれたらってずっと思ってた。そしたら私が今までしてきた苦労の殆どがしなくて良かったんだもの。慧がどんな姿でも私は今と同じ様に慧を想う」
「そう・・・・」
「私には慧しかいないように、慧にも私しかいないの。理由なんて無い。どう思われようと・・・・私はこういう・・・・生きかたしか出来ない」
姫華は言うと、走って部屋を出て行ってしまった。
それを無表情に見送った高平は、
「分かるよ・・・・・俺も、そうだから」
そうつぶやいた。