不自由恋愛シンドローム
「なんで・・・・・どうして高平なんかに会ったんだよ、それも一人で」
「・・・・・・・・」
咲は答えない。
「違うの・・・?」
「・・・・・」
「・・・・・姫華?」
慧と視線を合わせようとしない咲。
「あいつに呼び出されたの?」
この件に一体どれほど姫華が関わっているのか分からなかったがたぶん殆どが姫華のやった事なのだろうと思った。
堂々と本名でチェックインし、顔を隠しもしなかった姫華。
それはまるで慧に対するメッセージのようだ。
私は慧さえいれば他に何もいらない。
何を失っても構わない。
「きて・・・・・くれたの・・・・」
「え・・・・・姫華が?ここに?」
「そう、だから・・・・・ごめんなさい」
「なんで・・・」
「何かあったら白河くんに言うって約束してたのに・・・結局言うとおりにしなくて迷惑かけて・・・」
「何言ってんだよ」
「全部私が悪いの。舞嶋さんも、高平くんも、悪くない」
「は?」
「浮かれた、私が悪い」
「なに、それ・・」
「私、たぶん白河くんがお気に入りの生徒だったの」
お気に入りの生徒・・・・そのどれもが慧にとって違和感のある表現に聞こえた。
わざと距離を取る様な不自然さ。
「それで・・・・・酔っ払った私に、キスしてくれたり、声が聞きかったって言ってくれたりしたから調子に乗ってたの。だから舞嶋さんに嫌な思いさせて・・・だから悪いのは全部私」
慧は懸命に言葉を探して話す咲を見ながら強く拳を握る。