不自由恋愛シンドローム
だけど、男の力には先生絶対かなわないでしょ
ドアをノックする。



「はーい」


引き戸を開けると、コーヒーの香りがした。


放課後になると陽のあたらない東向きの準備室。

いつもの白衣、まとめた長い髪、メガネ。





「あ、白河くん。ちょっと、ここに座って?今コーヒー落ちるから」



勧められた椅子に大人しく座る。

窓際の机の前の丸いイス。



「白河くんて、コーヒー飲めるよね?何入れる?」

「ミルクだけ」

「りょうかーい♪」





慧はカップを渡され、咲は机に寄りかかって自分のコーヒーを飲んだ。


「ごめんね、呼び出したりして・・・・」

「いや、別にいいけど」

「ハンカチ返さなきゃと思って」


差し出されたのは小さめの紙袋。



違和感。

ハンカチにしては大きすぎる。



「授業の終わりとかに渡しても良かったんだけど、
なんとなく・・・白河くんだと目立つかなとか思って」

「俺だと?」

「あ、変な意味じゃなくていい意味でだよ?白河くん女の子に人気あるから」


ああ、と慧は思う。


中身を聞かれればハンカチを貸した経緯にまで話は及ぶかもしれない。

変に誤魔化せば、かえって噂の種を蒔く事になる。

それが姫華の耳に入るなど、考えたくも無かった。


「返さなくって良かったのに・・」



言いながら紙袋を受け取る。

「そんな訳にいかないよ。
本当は新しいのを買って返すべきなんだけど、それは逆に迷惑かもって思ったから」
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