お見合いに来ないフィアンセ
「そっちに利点があるなら、いいんじゃない?」

「きちんと考えたほうがいいってば」

「考えさせてもらうよ。だから言ったよね? 真剣に考えさせてくださいって」

「ま……そうなんだけど」

「なら、いいよね」

「うーん」と私はなんとなく言いくるめられたような感じを残してうなずいた。

 納得いかない。

 理解できない。

「では、失礼します」という声を少し遠い場所で聞きながら、私は腕を組んで仁王立ちした。

「うわさで聞く通り、とても礼儀正しい良い子じゃないか」と父が円卓に座りながら、微笑む。

 礼儀正しい?

 礼儀正しいなら、一回目の見合いからきちんと来てるんじゃないの?

 大学まで、押しかけられたから、体裁を整えるために謝りにきた……と考えるほうが理にかなっている。

 でも押しかけられて迷惑そうな顔はしてなかった。

 しかも「真剣に考えさせてください」ってわけのわからない返事までして。

 次にいつ会うかわからないけれど、次にあったときは必ず真意を聞かないと。

 それと真剣に考えるような付き合いでもないってわかってもらわないとね。

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