お見合いに来ないフィアンセ
「わからないんですか?」

「ん。わからない」

 私はテーブルに身を乗り出した。

「だって、なんの利益もないのに」

「ああ。お見合いのときにも言ってたね。利点がどうの~、って」

「それですよ、ソレ! 私にとったら利点がある。父の会社にとても有益な交際になるけれど。そっちは得しないし、むしろ大損です」

「その考え方がいまいちわからないんだよね」

 小山内駿人が肩をすくめた。

 800円もするコーヒーを口に運ぶと、のど仏が上下した。

「なんでわからないんですか?」

「美月さんだって、その考え方で言えば、なんの利益も得られないと思うよ。美月さんのお父さんには利益があるかもしれない。でも美月さんは? 美月さんにも利益がくるとは思えないよ」

「あー」と私は天井をあおいだ。

 確かに。小山内駿人の言う通りだと納得してしまう。

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