お見合いに来ないフィアンセ
 快晴。
 今日はきれいな青空が広がっている。

 私は競技場に足を運んだ。
 小山内さんの短距離走を見にきた。

 小山内さんには内緒で。
 わざわざ見に行くというのも、なんかアレな気がして。

 こっそり観戦。

 前々から、何度か競技場に見に来たことはある。
 小山内さんの載っている雑誌を片手に、見てきてた。
 クールで、恰好良くて。
 
 付き合うという契約書を作ってから、一週間が過ぎた。
 大会前というのもあって……なのか。どうかわからないけれど、連絡はとりあってない。
 会ってもいない。

 あの契約が現実だったかどうかさえ、危ういくらい普通の毎日になった。

 ジャージ姿の小山内さんが、競技場に姿を現した。
『きゃあ』という黄色の声援が沸き起こる。

 小山内さんはその声に気にも留めずに、ストレッチを始めた。

 遠くで見ていると、やっぱりクールな大人に見える。
 すらっと細身の体系。
 整った顔。
 黄色い声援に惑わされない精神。

 恰好いいなあ。
 短距離走の王子と言われているだけある。

 立っているだけで、絵になる。
 ストレッチしているだけで、輝いていみえる。

 そこに存在しているだけで、空気がかわる。

 スゴイ人だ……のはずなんだけど。

 
< 24 / 52 >

この作品をシェア

pagetop