お見合いに来ないフィアンセ
―駿人side-

「舘岩、今日の打ち上げパスで」
「はあ? 今ここで、ドタキャンかよ」
「面倒くさい」
「はいはい」

 俺の隣に立っていた舘岩が、「はあ」とため息をついて肩をまわした。

 僕はスマホを足元にあるスポーツバックに閉まった。

「珍しいな。スマホを触るなんて」
「彼女が来てたから」

「……ん? 俺の聞き間違い? 『彼女』って聞こえたけど」
「彼女って言ったよ。観戦にきてたんだ」
「は?」
「だから、恋人」

「はあ?」
 舘岩の表情がおもいきり崩れた。

「家まで送るから、打ち上げはパス」
「いつ、恋人ができたんだよ」
「先週かな。日曜日に、デートした」

「は、はぁん。土曜日のドタキャンもその関係かよ」
「ま、そゆこと」
「おめでいたこって」

 僕は「ありがと」と呟くと、自然と顔が緩むのがわかった。

 美月ちゃんが、今日観戦に来ていたなんて。
 嬉しいな。

 何も話してなかったから。
 知らないと思っていた。

 調べてくれたのかな。

 幸せだな、僕。
 美月ちゃんって優しい。

―駿人side-おわり
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