お見合いに来ないフィアンセ
東ゲートで待っていると、車が一台、私の前で静かに停車した。
これは見覚えのある車だ。
小山内さんの車。
助手席の窓が開くと、小山内さんが運転席から身を乗り出してくれた。
「ずいぶん、待たせちゃったね。行こうか」
ジャージ姿の小山内さんが、にっこりと笑う。
「失礼します」と私は言うと、助手席のドアを開けて車の乗りこんだ。
「美月ちゃんが、来てくれて嬉しいよ。ありがと」
『ちゃん』?
この前は『さん』だったのに。
少しは距離が縮まった……ということなのかな。
「雑誌に……書いてあったので。大会の予定が」
「ああ。今後の予定は?って前に聞かれたなあ」
私がシートベルトをつけると、車が動き出した。
「雑誌に載るってすごいですよね」
「そうかなあ? やたらと騒ぎすぎだよね。芸能人でもないのにさ。大学の短距離で」
「小山内さんがスゴイからだと思います。新記録だしてるし」
「うーん、たまたま?」
……やっぱり、この人は天然だ。
新記録を『たまたま』って言う人ってなかなかいないでしょ!
もしかしたら、鈍感なのかな。
「小山内さん、人気ありますよ。観戦中もまわりの人たちがキャーキャーいってました」
女性たちの声援は、すごかった。
小山内さんの行動一つひとつに、色めきだってたもんなあ。
ま、私のその一人って言えば……そうなんだけど。
きゃーきゃー叫んだりはしないけど、『きゅん』ってくらい。
「僕の? ちがう、ちがう。僕じゃないよ。そんなにモテないから。違う人だよ。美月ちゃん、可愛いねえ」
「はい?」
「ん?」
「いや、モテてますから。雑誌で特集組まれてますし。その容姿と頭脳をもって、モテないわけないでしょ。雑誌に載るってこと自体、世間から注目されてますよ?っていう証ですよね?」
「んー、知らない。僕、興味ないし」
可愛いねえ……って言った?
言ったよね? この人。
恥ずかしげもなく堂々と。
カワイイ? カワイイ??
え?
ちょっと待って。
どこがどう回って、『カワイイ』に結びつくんだ?
これは見覚えのある車だ。
小山内さんの車。
助手席の窓が開くと、小山内さんが運転席から身を乗り出してくれた。
「ずいぶん、待たせちゃったね。行こうか」
ジャージ姿の小山内さんが、にっこりと笑う。
「失礼します」と私は言うと、助手席のドアを開けて車の乗りこんだ。
「美月ちゃんが、来てくれて嬉しいよ。ありがと」
『ちゃん』?
この前は『さん』だったのに。
少しは距離が縮まった……ということなのかな。
「雑誌に……書いてあったので。大会の予定が」
「ああ。今後の予定は?って前に聞かれたなあ」
私がシートベルトをつけると、車が動き出した。
「雑誌に載るってすごいですよね」
「そうかなあ? やたらと騒ぎすぎだよね。芸能人でもないのにさ。大学の短距離で」
「小山内さんがスゴイからだと思います。新記録だしてるし」
「うーん、たまたま?」
……やっぱり、この人は天然だ。
新記録を『たまたま』って言う人ってなかなかいないでしょ!
もしかしたら、鈍感なのかな。
「小山内さん、人気ありますよ。観戦中もまわりの人たちがキャーキャーいってました」
女性たちの声援は、すごかった。
小山内さんの行動一つひとつに、色めきだってたもんなあ。
ま、私のその一人って言えば……そうなんだけど。
きゃーきゃー叫んだりはしないけど、『きゅん』ってくらい。
「僕の? ちがう、ちがう。僕じゃないよ。そんなにモテないから。違う人だよ。美月ちゃん、可愛いねえ」
「はい?」
「ん?」
「いや、モテてますから。雑誌で特集組まれてますし。その容姿と頭脳をもって、モテないわけないでしょ。雑誌に載るってこと自体、世間から注目されてますよ?っていう証ですよね?」
「んー、知らない。僕、興味ないし」
可愛いねえ……って言った?
言ったよね? この人。
恥ずかしげもなく堂々と。
カワイイ? カワイイ??
え?
ちょっと待って。
どこがどう回って、『カワイイ』に結びつくんだ?