お見合いに来ないフィアンセ
 えっと……二重人格?
 今、明らかに人柄がちがったよね?
 怖かったけれど。

 スマホが再びなりだし、「うわっ」と私は驚きの声があげた。

 相手はまた「バカ」と表示されていた。

「小山内さん、どうしましょう?」
「一応、出といて。またバカ話が始まったら切っていいから」

 私は通話ボタンを押した。

『いきなり切るな!』
「ようけん」
『はいはい、わかりましたー。明日の集合は午後からだってよ。午前はゆっくり休めとのことだ』
「わかった」
『そんでぇ。さっきの話の続きでぇ。彼女さぁん、俺の電話番号は……』

 舘岩さんの声がでれっとなった途端に、小山内さんの運転している目がスッと細くなるのがわかった。

 私は慌てて、終了のバタンを押して通話を切った。
 これでいいの……かな。

「美月ちゃん、ああいうバカに流されないようにね」
 小山内さんが、にっこりとほほ笑んでいつも通りの声に戻った。

「はい……」
 でも、小山内さんのお友達なのでは?

「午前中休みになったから、これからどっか行こうか」
「いいんですか? 飲み会があるのでは?」
「行かないよ。美月ちゃんと一緒にいられる大切な時間なのに、飲み会なんてどうでもいい」
「え?」
「ん? どうしようかあ。夕飯、一緒に食べようか。何が食べたい?」

「あーー、なんでも大丈夫です」
「んじゃ、適当に……」

< 29 / 52 >

この作品をシェア

pagetop