お見合いに来ないフィアンセ
運転席に戻った小山内さんが、助手席の窓を開けた。
「で? 何のよう?」
「一応、報告。あいつがいると話せないから。相馬は、帰る気ゼロ。お前のママに電話してた。練習、午後からだし。今夜はどっかで時間を潰すほうがいい。以上」
「わかった」
「ちょ……ちょ、ちょっと!」
私は舘岩さんの腕を掴んで呼び止めた。
「俺に用? 嬉しいなあ。ピンクパンツのおかげかな」
「ちがいます。パンツの話はしないでください。舘岩さんって敵なんですか? 味方なんですか?」
私の問いかけに、立岩さんが噴き出して笑い出した。
「駿人、高校生に心配されてるぞ」
「いま、話したから」
「あ、それでか。俺は味方でも敵でもない。どちらかって言うと敵に近いんじゃないかな。駿人の母さんに親父の経営を握られてるから、俺は逆らえない。でも駿人の気持ちもわかる」
「そう……なんですね」
小山内さんが、私の手を握ってきて「大丈夫だよ」と答えてくれた。
「まわりに信用できる人がいないって辛いなって思って……」と私は下を向いた。
私だったら、耐えられない。
誰か信用できて、信用できないのか。
そう考えるのが嫌で、誰とも距離を縮めないっていう生き方……きついよ。
昨日の面白かったテレビの話とか。
町で見かけた変な人の話とか。
そういう他愛のない話が、できないんだよ。
笑いあえないんだよ。
「へえ、いい子だね」と舘岩さんが呟く。
「いい子じゃなきゃ、僕が惚れない」
「……たしかに」
小山内さんと舘岩さんが目を合わせると、お互いに口を緩めた。
「ますますアレだな。今夜は絶対に、どっかで時間を潰したほうがいい。駿人にオンナができたって気が立ってるからヤバい」
「わかってる」
小山内さんは助手席の窓を閉めると、エンジンをかけた。
「さて。どうしようか。ホテルに行く?」
「え? ほ、ほ……ホテル!?」
私の声が裏返る。
「お一人で……お泊りに……」
「なわけないでしょ。美月ちゃんも一緒だよ」
ホテル?
一緒に?
それって……そういうこと?
いやいや、付き合ってまだ一週間だよ。
しかも会ってるのは今日で2回目。
急展開じゃない? これって……。
「で? 何のよう?」
「一応、報告。あいつがいると話せないから。相馬は、帰る気ゼロ。お前のママに電話してた。練習、午後からだし。今夜はどっかで時間を潰すほうがいい。以上」
「わかった」
「ちょ……ちょ、ちょっと!」
私は舘岩さんの腕を掴んで呼び止めた。
「俺に用? 嬉しいなあ。ピンクパンツのおかげかな」
「ちがいます。パンツの話はしないでください。舘岩さんって敵なんですか? 味方なんですか?」
私の問いかけに、立岩さんが噴き出して笑い出した。
「駿人、高校生に心配されてるぞ」
「いま、話したから」
「あ、それでか。俺は味方でも敵でもない。どちらかって言うと敵に近いんじゃないかな。駿人の母さんに親父の経営を握られてるから、俺は逆らえない。でも駿人の気持ちもわかる」
「そう……なんですね」
小山内さんが、私の手を握ってきて「大丈夫だよ」と答えてくれた。
「まわりに信用できる人がいないって辛いなって思って……」と私は下を向いた。
私だったら、耐えられない。
誰か信用できて、信用できないのか。
そう考えるのが嫌で、誰とも距離を縮めないっていう生き方……きついよ。
昨日の面白かったテレビの話とか。
町で見かけた変な人の話とか。
そういう他愛のない話が、できないんだよ。
笑いあえないんだよ。
「へえ、いい子だね」と舘岩さんが呟く。
「いい子じゃなきゃ、僕が惚れない」
「……たしかに」
小山内さんと舘岩さんが目を合わせると、お互いに口を緩めた。
「ますますアレだな。今夜は絶対に、どっかで時間を潰したほうがいい。駿人にオンナができたって気が立ってるからヤバい」
「わかってる」
小山内さんは助手席の窓を閉めると、エンジンをかけた。
「さて。どうしようか。ホテルに行く?」
「え? ほ、ほ……ホテル!?」
私の声が裏返る。
「お一人で……お泊りに……」
「なわけないでしょ。美月ちゃんも一緒だよ」
ホテル?
一緒に?
それって……そういうこと?
いやいや、付き合ってまだ一週間だよ。
しかも会ってるのは今日で2回目。
急展開じゃない? これって……。