お見合いに来ないフィアンセ
約束をしたわけじゃないけれど、彼の言う通り5分しても来なかったら帰ろうと心に決めて待ってみた。
5分も待たずに、ジャージ姿の小山内駿人が、車の乗って現れた。
「ごめんね。待たせてしまったね。乗って」という言葉に、私はこくんとうなずくと、何も疑うことなく車に乗り込んだ。
助手席に座り、シートベルトに手をかけて、ハッとする。
私はつい数分前まで、彼に対して相当の怒りを感じていた。
むかつく、とまで思っていた。なのに、すんなり車の助手席に座って、素直に従っている。
窓に反射する己の顔を見て、うっかり助手席に乗ってしまった自分に苛立った。
徒歩であてもなく歩いて大学の近くまできたときはかなりの距離を歩いたと思っていた。のに、車だとあっという間にホテルに到着した。
地下駐車場に車が入り、停車すると、小山内駿人がスマホを取り出した。
「ちょっと、ごめんね」と私に謝ってからスマホを耳にあてた。
『小山内っ‼ おまえ、いまどこにいるんだよ。これからミーティングして、打ち上げだろ~』
電話の中から、男の声が聞こえてくる。たぶん、同じ陸上の友人あたりだろう。
急に姿が消えた小山内駿人を心配して、連絡してきたとうかがえる。
「ああ、悪い。用事を思い出して。今日はもう車に乗って帰ってるんだ。あとのことはお前に任せる」
小山内駿人はその後、友人と二言三言ほど会話して電話を終わりにした。
5分も待たずに、ジャージ姿の小山内駿人が、車の乗って現れた。
「ごめんね。待たせてしまったね。乗って」という言葉に、私はこくんとうなずくと、何も疑うことなく車に乗り込んだ。
助手席に座り、シートベルトに手をかけて、ハッとする。
私はつい数分前まで、彼に対して相当の怒りを感じていた。
むかつく、とまで思っていた。なのに、すんなり車の助手席に座って、素直に従っている。
窓に反射する己の顔を見て、うっかり助手席に乗ってしまった自分に苛立った。
徒歩であてもなく歩いて大学の近くまできたときはかなりの距離を歩いたと思っていた。のに、車だとあっという間にホテルに到着した。
地下駐車場に車が入り、停車すると、小山内駿人がスマホを取り出した。
「ちょっと、ごめんね」と私に謝ってからスマホを耳にあてた。
『小山内っ‼ おまえ、いまどこにいるんだよ。これからミーティングして、打ち上げだろ~』
電話の中から、男の声が聞こえてくる。たぶん、同じ陸上の友人あたりだろう。
急に姿が消えた小山内駿人を心配して、連絡してきたとうかがえる。
「ああ、悪い。用事を思い出して。今日はもう車に乗って帰ってるんだ。あとのことはお前に任せる」
小山内駿人はその後、友人と二言三言ほど会話して電話を終わりにした。