ワンルームで御曹司を飼う方法

 とりあえず上半身の汗を拭って、新しいパジャマを着せてあげる事が出来た。さすがに下は何が何でも無理なので、タオルと代えのズボンを社長の手に押し付けて私はサッサとキッチンへ向かう。

「真壁さんて人からお薬もらってきました。本当は食後に服用するのがいいみたいなんで、ヨーグルト買って来たから胃を痛めないようにこれ食べてから飲んで下さい」

 お皿に移したヨーグルトに、栄養を加え食べやすいようにするために蜂蜜とすりおろしたリンゴを加えた。小さい頃、風邪をひいた時によくお母さんが作ってくれたものだ。

 なんとか自力でパジャマのズボンを着替えた社長は、今度は素直にそれを受け取ってゆっくりと食べ始める。

「あ……美味いね」

 身体が弱ってる時は不思議と優しい味が美味しく感じるものだ。社長はどこかホッとしたような表情で、ゆっくりとスプーンを口に運び続けた。

「お薬、粉と錠剤ですけど飲めますか?オブラード包みます?」

「お前、俺をなんだと思ってるの?」

 そりゃまあ27歳の大人に向かってする気遣いではないだろうけど、でもある意味子供より手の掛かる人だ。現にさっきだってパジャマを着替えさせたばかりだし。

「じゃあ平気ですね。ちゃんと飲んでください」

コップに汲んだスポーツドリンクと薬をトレーに用意して、私は今度は氷枕を用意しに再びキッチンへ戻った。

 最近は冷却シートがすっかり主流だけど、でもやっぱり熱のある時はこれが気持ち良いと思う。程よく首筋を冷やしくれて、水の感触が涼しげに癒してくれて。

 氷枕をタオルで包み社長の元へ戻ると、彼は「ぅえ」と言いながら苦い顔をして薬を飲み下していた。

 なんだ、やっぱり粉薬苦手なんじゃない。
  
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