ワンルームで御曹司を飼う方法

 氷枕をセットしてあげると、社長は恐々と頭を乗せてから不思議そうな表情を浮かべていた。

「なにこれ?」

「氷枕ですよ。冷たくて気持ちいいでしょ?」

「……ぐにょぐにょしてゴリゴリしてチャプチャプするな」

 初めて体験する氷枕に子供のような感想を述べる彼が何だか可笑しくて、私は喉の奥でクスクスと笑いながら掛け布団の襟元を直してあげた。

 そしてもう一度タオルで軽く顔の汗を拭ってあげてから、柔らかな前髪の下にそっと手を滑り込ませ掌で額に触れる。

「あとはちゃんと寝てれば熱も下がりますからね。目が覚めたら水分摂って。欲しい物があったら声掛けてください。明日の朝はあったかいおうどん作ってあげますね」

 火照った顔に私の冷たい手が気持ちいいのか、社長はどこかゆったりとした表情で目を閉じた。さっきまでの苦しそうな様子がだいぶ和らいだ事に、心の底からホッとする。

「……宗根」

「なんですか?」

「気持ちいい」

 やっぱり顔が火照っているのだろうか。氷枕だけでなく濡れタオルも用意してあげようかな。

 そう思って立ち上がろうとしたけれど、社長は離し掛けた私の手を掴むと再び自分の額へと持っていった。

「……もうちょっとこのまま」

「え……」

 思いもよらなかった台詞に少し驚いたけれど、私は立ち上がりかけた姿勢を戻すとそのまま布団の脇に座りなおした。 
 
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