ワンルームで御曹司を飼う方法

 ……やっぱり、病気って身体の問題だけじゃない。気持ちだって弱って、なんだか寂しくなって。

いつもは強気な社長だってこんな風に少し甘えたくなるんだ。

「いいですよ。寝るまでこうしててあげます」

 私がそう言うと、社長の口元が僅かに綻んだ気がした。

「……宗根」

「なんですか?」

「……なんでもない」

 夢うつつのような言葉を残して、社長はそのまま眠ってしまったようだった。

 落ち着いた寝息が耳に届いて、私はそっと額から手を離す。

 枕元に飲み物を置いといてあげなくちゃ。それから、部屋が乾燥してるから霧吹きで加湿しておこう。喉にいい精油を少し混ぜるといいかもしれない。

 あれこれ考えながら立ち上がろうとしたけれど……私は幼子のような寝顔をしている社長にもう一度手を伸ばすと、軽く頭を撫でてあげる。

「……大丈夫。すぐに良くなりますからね」

 寝ている彼を安心させるような私の自己満足な行為は、なんだかペットを愛でているみたいだと思った。

 
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