ワンルームで御曹司を飼う方法

***

朝になると、社長の顔色は随分と良くなっていた。

穏やかな寝息をたてる彼の額に手を伸ばしてみると、もう熱さは感じられない。

「……良かった……」

 ホッと安堵の息を吐き出し、私は朝食の用意をしようとキッチンに立つ。

 本当は熱が下がってもしばらくは安静にするべきだけど、秘書の人達が迎えに来る9時まであと3時間しかない。

 栄養を摂らせて薬を飲ませしっかり体力をつけてもらおうと、私は気合を入れて朝食の準備に取り掛かった。



「あー、どうりで。あいつら迎えに来ないなーと思ってたんだ」

 たっぷりの野菜で煮込み、玉子を落とした栄養抜群のうどんを熱そうにすすりながら、社長は私が話した昨夜の顛末に感心しながら相槌を打った。

「だから9時まではゆっくり休めますから。ご飯食べたらお薬飲んで身体を休ませてくださいね」

「へーい」

 おどけたような返事は随分元気が出てきた証拠だ。そんな彼の様子が私は嬉しくてホッとする。

 やっぱり社長はこうじゃなくっちゃ。いつだって余裕たっぷりで飄々としてて、私や周囲をグイグイ振り回すほど元気でいて欲しい。……と思ったけれど。

「何?人の顔見てニヤニヤしちゃって、どうかしたのか?」

「ニヤニヤって失礼ですね。元気になって良かったってホッとしてるんですよ」

「そりゃどーも。宗根、おかわり」

 少し元気が戻った途端この人を食ったような態度である。

 やっぱり彼には敵わないなあなんて思いつつも、食欲が戻って良かったと私はまたひとつ安堵した。
 

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