ワンルームで御曹司を飼う方法
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朝になると、社長の顔色は随分と良くなっていた。
穏やかな寝息をたてる彼の額に手を伸ばしてみると、もう熱さは感じられない。
「……良かった……」
ホッと安堵の息を吐き出し、私は朝食の用意をしようとキッチンに立つ。
本当は熱が下がってもしばらくは安静にするべきだけど、秘書の人達が迎えに来る9時まであと3時間しかない。
栄養を摂らせて薬を飲ませしっかり体力をつけてもらおうと、私は気合を入れて朝食の準備に取り掛かった。
「あー、どうりで。あいつら迎えに来ないなーと思ってたんだ」
たっぷりの野菜で煮込み、玉子を落とした栄養抜群のうどんを熱そうにすすりながら、社長は私が話した昨夜の顛末に感心しながら相槌を打った。
「だから9時まではゆっくり休めますから。ご飯食べたらお薬飲んで身体を休ませてくださいね」
「へーい」
おどけたような返事は随分元気が出てきた証拠だ。そんな彼の様子が私は嬉しくてホッとする。
やっぱり社長はこうじゃなくっちゃ。いつだって余裕たっぷりで飄々としてて、私や周囲をグイグイ振り回すほど元気でいて欲しい。……と思ったけれど。
「何?人の顔見てニヤニヤしちゃって、どうかしたのか?」
「ニヤニヤって失礼ですね。元気になって良かったってホッとしてるんですよ」
「そりゃどーも。宗根、おかわり」
少し元気が戻った途端この人を食ったような態度である。
やっぱり彼には敵わないなあなんて思いつつも、食欲が戻って良かったと私はまたひとつ安堵した。