ワンルームで御曹司を飼う方法
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【3】
「遊園地?」
「そう、こないだスーパーの福引でペア招待券当ててね。でも私、乗り物苦手だから。宗根さん良かったらもらってくれない?」
兵藤さんはそう言って休憩所のテーブルに2枚の券を置いた。私は箸を持っている手を止めると、ファンシーな絵が描かれたチケットと向かいの席の兵藤さんの顔をぱちぱちと目をしばたかせ見てしまう。
「でもいいの?私がもらっちゃって?」
「うん。一応エリたちにも声掛けてみたんだけどさ、『ディズニーランドじゃないなら行かなーい』だって。失礼しちゃうよね、ワガママで」
口ではそう言うもののクスクスと可笑しそうに笑う兵藤さんは、本気で狩野さんのことを怒ってる訳ではないようだ。
「ね、だからもらって。期限付きだから無駄にしちゃうのももったいないし」
兵藤さんはそう言いながら、自分のお弁当を除けるようにして2枚のチケットを私の前に差し出す。そして、にっこりと笑うと
「良かったら社長と行っておいでよ。庶民のテーマパークを見学しに、社会学習させてあげたら?」
そんな言葉を口にした。
彼女としては純粋に良い提案だと思ったのだろう。けれど、突然社長の話が出たことに私は密かに鼓動を乱してしまった。