ワンルームで御曹司を飼う方法


 一番前の席に座れたジェットコースターは規模が小さい分、カーブが急だったりやたら小回りな設計で随分とスリルがあった。

「このジェットコースター作った奴、天才すぎるだろ。頭上15センチに鉄柱があるとか、計算が緻密すぎて恐ろしい」

「これ、背の大きい人は本気で死の危険を感じますよね……」

「日本は広いな。まだまだ俺の知らない驚きの建築物があるとは」


 わりと本気で恐がっていた社長のために、次は危険性のないメリーゴーランドに向かう。

 馬やら馬車やらを模した乗り物が円をなして並ぶ中、私は社長に白馬を勧めた。

「ほら、白馬の王子さまならぬ白馬の御曹司さまですよ」

「ちょっと待て。なんかこれ恥ずかしい」

 小さな子供たちに混じって白馬に跨った社長は、実にこっ恥ずかしそうに苦笑いをしていたけど、音楽がなって動き出したらわりと嬉しそうだったので、私はチープな白馬に跨る御曹司さまの姿をスマホで記念撮影しておいた。

 もちろんメリーゴーランドから降りた後、「頼むから消してくれ」と追いかけまわされてしまったけれど。

 
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