ワンルームで御曹司を飼う方法
「もしもしイサミちゃん?さっきはゴメンね、突然きれちゃって」
『灯里、無事なの?大丈夫?』
私を心配してくれる親友の声にホッとする。安心と同時に寂しさが込み上げて来てちょっと涙も滲んだ。
私もやっぱりイサミちゃんを追って神奈川に行けば良かった。ひとりぼっちで東京にいたって何もいい事なんかない。イサミちゃんさえ側にいればきっと、あんなワガママ社長に振り回されたりする事もなかった。
大切な幼なじみが恋しくて、声が涙に詰まっていく。
「心配してくれてありがとう。なんとか大丈夫だよ」
『そう、良かった。電話も出ないからヒヤヒヤしたよ。蓮にまで連絡しちゃった』
「えっ、蓮に?」
その名前を聞いて、私の胸が途端にキュッと詰まる。
芦屋蓮(あしや れん)。私のもうひとりの幼幼馴染で……初恋の人。蓮ともやっぱりご近所さんで20年以上の付き合いになる。小学生の頃まではイサミちゃんと3人でよく遊んだりもした。私が彼への恋心を自覚したのは高校生になってからで。けれど、その時にはもう蓮には彼女もいたし、せっかくの“仲のいい幼馴染”の関係を壊したくなくて、私の口から彼に想いを告げる事はなかった。
けれど、想いは吐き出さなければ消えないで燻るだけなのか、私の初恋は今でも静かに現在進行形。大学卒業後、蓮は地元で就職したけれど、出張でこちらに来た時や休暇で遊びに来た時なんかちょくちょく顔を見せてくれる。『ちゃんとひとりでやっていけてる?』なんて、ぶっきらぼうに心配してくれながら。