ワンルームで御曹司を飼う方法
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「えーっと、ケーキは取りに行ったし、あとはチキンとシャンパンと……」
12月24日当日。華やいで浮かれる商店街を、私もウキウキと弾む足取りで歩いた。
こんなにワクワクするクリスマスなんていつ以来だろう。まるで子供に戻ったみたい。
考えてみれば、私の人生でのクリスマスはほとんどがイサミちゃんと一緒だった。それこそ学生の頃は蓮も一緒で3人でよくパーティーもしたし、上京してからもイサミちゃんは必ず24日か25日は空けていてくれた。
今となって考えてみると、イサミちゃんには彼氏が居た時期だってあったのに、私がひとりぼっちで過ごすのは可哀想だと思ってわざわざ付き合ってくれていたんだと分かる。
「本当に……私ってばイサミちゃんにお世話になりっぱなしだったなぁ……」
街路樹に飾られているピカピカ光るイルミネーションを眺めながら歩けば、去年も一緒に過ごしてくれたイサミちゃんとのクリスマスを思い出す。
「そういえば、今月になってイサミちゃん忙しそうだからあんまり電話してないや。元気にしてるかな」
彼女が遠方へ行ってしまった四月には、これからはクリスマスもお正月もひとりぼっちだと絶望的な気持ちになったけど。
まさか男の人と……しかも好きな人とクリスマスを過ごすことになるなんて、あのときの私からは想像も出来ない。
「……わ、私ってば。“好きな人”だって……」
改めて今日のことを考えると、初めて男の人と過ごすクリスマスなんだと意識して胸がドキドキする。
赤くなってきてしまった頬を隠すように私はマフラーに顔をうずめさせ、足早に商店街の歩道を歩いた。
――……きっと、これが最初で最後なんだ。社長と過ごせるクリスマスは。
そう考えるとちょっと胸は痛んだけれど、だからこそ素敵な思い出にしようと強く思えた。