ワンルームで御曹司を飼う方法
「……あか……り……」
イサミちゃんはとても驚いた顔をしている。きっと、私がこんなことを言い出すなんて思っていなかったのかもしれない。けど。
「わ、私、毎週末に神奈川まで行ってあげる! ううん、仕事が早く終わった日は平日だって行ってあげる! イサミちゃんを励まして、慰めるために通うから! いけない日はずっと電話する、イサミちゃんが寂しくなくなるまでずっと、朝までだって。だから……逃げないで、イサミちゃん! 逃げちゃ駄目だよ……!」
ここで逃げたら、何もかも投げ出してしまったら、きっと彼女は後悔する。
自分を信じて、未来を信じてきた栗原イサミの人生を、否定することになってしまうから。
だから逃げちゃ駄目だ、絶対。
「イサミちゃんなら絶対乗り越えられるよ! 私が付いてる! 乗り越えられるまで、私がずっと応援し続けるから! 励まして、慰めて、抱きしめて、なんでもするから! だから大丈夫、イサミちゃんは……イサミちゃんは、やれば出来る子なんだから!!」
激励した私を、イサミちゃんはしばらく目を見開いたまま見ていた。涙のいっぱい溜まってる瞳で、呆気にとられたように。
けれどやがて、その涙をボロボロと零し出すと。
「……あか……り、灯里……、私……」
そう言葉を詰まらせて号泣した。胸に取り縋ってわんわん泣く彼女を、私はぎゅっと強く抱きしめる。
私の元気が全部イサミちゃんに伝わればいい、そう願いながら。