ワンルームで御曹司を飼う方法
「……蓮、なんて言ってた?」
スマホでの会話だというのに思わず前のめりになって聞いてしまう。私の声に何かを察したイサミちゃんがフッと吹き出してから答えた。
『心配してたよ。“世話がやける”って』
私が蓮に恋してる事を知っているイサミちゃんが、可笑しそうにクスクスと笑う。途端に、食いつくように尋ねた自分が恥ずかしくなてしまった。
「蓮にも余計な心配掛けちゃったね。謝っておかなくちゃ」
『それがいいよ。後で灯里の口からちゃんと説明してあげな。で、例の社長モドキはどうなったの?』
「あ、そうだ。それがね、どうやら本物みたいなんだけど――」
すっかり脇道に逸れてしまっていた本題を思い出し、焦って現状報告に戻った。晩ご飯は食べさせてしまったけど、まだ泊めると決めた訳じゃない。ていうか泊めたくない。いくら社長とはいえ相手は初対面の男だし、同じ屋根の下で一夜を過ごすなんてやっぱり危険すぎる。
どうすれば追い出せるか、賢いイサミちゃんに知恵を借りようとした時だった。突然、私の後ろで玄関のドアがバン!と勢いよく開いた。驚いて振り向くと。
「宗根!お前んちのシャワーどうなってんだよ!?水しか出ねーんだけど!」
「きゃあああああああ!!?」
なんと、腰にタオルを巻いただけのすっぽんぽん姿で、結城社長が全開の玄関からこちらに向かって叫んでるではないか。
「な、なななな何やってるんですか!?そんな格好で!!」
「お前がいつまでも戻って来ないからだろ!それより寒くて凍える!なんだあの冷水シャワーは!?」
「ちょっ!その格好で表出ないで下さいよ!」
すっぽんぽん男がうちの玄関から外へ飛び出してきたなんて、ご近所に見られたら大変だ。公然わいせつ罪の幇助でお巡りさんに捕まってしまう。
私は目を白黒させながら、大慌てですっぱだかの結城社長をぐいぐいと玄関の中へと押し込めた。