ワンルームで御曹司を飼う方法
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【2】
――鳥は、どこへ帰るんだろう。
高い高い木の枝に作られた巣。それとも誰かの待つ鳥かご。
けれど、翼を羽ばたかせ吸い込まれるように舞い上がっていく鳥は、自由な空へ帰っていくように見える。
――あの子達が本当に帰る場所はどこだろう。
朝靄のかかる冬の朝。空へ飛び立っていく鳥達を窓から眺め、そんなことをぼんやりと思った。
朝の光が部屋まで届かない早朝。床に敷かれた布団では、まだ社長が寝息をたてている。
穏やかな呼吸に合わせてかすかに揺れる長い睫毛。無防備な寝顔をこっそりと眺めながら、触れたい欲求を抑えた。
「……社長の帰る場所はどこですか……?」
小さく小さく呟いた声は、寝ている彼の耳にも、監視している機械にも、きっと届かない。
誰にも聞こえない問いかけが静かな部屋に溶けて消えると、私は立ち上がってキッチンへ向かった。
今日もいつものように、彼のためのホットケーキと野菜ジュースの朝ごはんを作るために。