ワンルームで御曹司を飼う方法

 驚いて見上げた瞳に映るのは、私を抱きしめて穏やかに微笑む社長の顔。

 そして驚いて瞬きを繰り返す私の背中をポンポンと慰めるように叩いてから立ち上がらせ、そのままベッドに座らせる。

「お前の言う通りだよな。ペットになるって言い出したのも、言いたいこと言えるようにするって約束したのも、俺だもんな」

 社長はそう言うと、隣に腰を下ろしもう1度私を抱きしめた。


「今夜はずっと側に居る。ペットとして最後の義務を果たすよ。前にしてやったみたいに、一晩中添い寝して慰めてやるから。だから元気出せ。……これがお前にしてやれる最後のペットセラピーだ」

「最後の……ペットセラピー……」


 彼は視線を合わせると無邪気そうな笑みを浮かべて、そのままベッドへ寝そべった。私をぎゅっと抱きすくめたまま。

「ほれ、早く泣き止んでさっさと寝ろ」

 そんな雑な慰めを口にしながら片手で乱暴に頭を撫でてくれる彼に、私の胸が驚きとか喜びとかときめきとか切なさとか色々なもので溢れかえる。

 ぎゅっと彼の懐にしがみつくように甘えれば、頭を撫でていた手が今度はポンポンと安心させるように背中を叩いてくれた。

 その手に切ない愛しさと安心感を覚えながら、私はゆっくりと理解する。


 ――彼は、私にさよならを受け容れる時間をくれているんだ、と。
 
 
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