ワンルームで御曹司を飼う方法
3
【3】
――翌朝。
「宗根ー。宗根ちゃーん。宗根っちー、起きろー。俺、そろそろ仕事行くから朝メシ用意して」
休日の幸せな睡眠にフワフワ漂っていた私の頭は、傍若無人な男性の声によって一気に目覚めさせられた。
ガバッと勢い良く起きれば、目の前には端正な男の人の顔。寝起きの私の顔をジッと覗きこんでる。
「!!??」
えっ誰!?何!?男の人!?なんで!?どうして!?
寝ぼけていたせいでいきなりパニックになったけど、部屋の中を見回して昨夜の記憶がどんどん蘇ってきた。
そうだ、昨日……結城社長を名乗るこの人がいきなり転がり込んできたんだっけ。それで、ご飯食べさせて、シャワー貸して、パンツ買いに行かされて……ああ、思い出してきた。
『俺、ボクサーパンツ派なんだけど。ま、いっか』
なんて失礼な事を言いながら、コンビニで買ってきたパンツ(トランクス)とTシャツを着ると、社長はなんとさっさと私のベッドへと潜り込んだのだ。いくらなんでも会ったばかりの男性を自分の寝床に寝かせるのはありえない。そう思って
『社長、お客さん用の布団敷くからこっちで寝てください』
と勧めてみたものの。
『え?床で?なんで?』
フローリングに敷いた布団で寝ると云う文化は御曹司さまの生活には存在しないようで。私はしどろもどろに説得したものの『異文化すぎてちょっと理解できないなー』のコメントと共に、結城社長は涼しい顔でベッドへと潜り直しただけだった。
結局、ベッドを取られた私は布団で寝ることになったんだけども。家族以外の男の人とふたりきりで寝るなんて人生で初めての体験。幼馴染の蓮とだってこんなシチュエーションはなかったのに。
緊張しすぎて寝付けない私とは対照的に結城社長はさっさと寝息をたててしまい、ソワソワした気持ちを抱えたまま私がようやく眠りに落ちたのは深夜の3時を回った頃だった。