ワンルームで御曹司を飼う方法
「あ、当たり。さすがですね。私の考えてることなんてお見通しですか」
彼が私の旅の意味を理解してくれていたことが嬉しい。この三年間、一歩ずつ踏みしめていたものが、ちゃんと充に繋がっていたようで。けれど。
「まあ、ノーザンテリトリー入ってからが大変だったけどな。捜索隊1200人動員してお前の行方を追ったんだぞ。オーストラリアは広いからな、いやー苦労したした。無事に見つかって良かったよ」
「1200人!?」
とんでもない裏事情を聞かされて、私は驚きと困惑で目を白黒させる。自分の自由気ままな旅のせいで、またしても途方のない人員とお金が動いていただなんて。
「ご、ごめんなさい、お手数かけまして……」
私が謝ることだろうかとやや疑問にも思ったけれど、とんだ大騒動だと思うと謝らずにはいられない。
すると充は実に楽しそうな笑顔になって私の頭をグリグリと撫でた。
「本当だよ、世話かけやがって。バツとして俺の目の届かないとこにはもう行かせないからな」
「へ?」
彼の発した不可思議な言動にそもそもの疑問を思い出し、私は改めて尋ねてみる。
「あの……今ってどこに向かってるんですか? それに、私をスカウトって……?」
こちらの質問に充は口もとに得意げな笑みを浮かべると、ソファーに置いてあった鞄から数枚の書類を取り出して手渡してきた。
それを受け取り書面を目で綴っていく。そこにはさっき充が口にした『一般社団法人Y‐Connect』の名前とコンセプト、事業計画などが書かれていた。
「……『人と、世界と、結城を繋ぐ。未来育成計画』。これは……?」
コンセプトを読み上げた私に、充はコクリと一度頷いてから説明を始めた。