ワンルームで御曹司を飼う方法
「バーカ、継いでるだろ。ジジイは俺に結城を支え育て、未来に繋いで欲しかったんだ。総会長の椅子にふんぞり返ってるより、今やってる事の方がよっぽど褒められると思わねえ?そもそも最初に『Y‐Connect』に賛成してくれたのは前総会長だからな。ジジイ、今の俺を見て絶対に天国で喜んでるよ」
明るく、そして偽りなく言い切った充の姿に、私は鳥肌が立つほどの感激とときめきを覚えた。
この人は本当に結城を、人を、世界を背負えるただひとりの人物なんだと心の底から思えた。気丈で強く、誰よりも確実な未来を見る力を持っている。生まれ付いての世界有数の指導者なんだと。
「……そうですね。きっとお爺さんも喜んでくれてる。やっぱり充はすごいな、日本一の経営者で、指導者で、まごうことない結城の御曹司だと思います」
感動で涙まで滲んできてしまった私に、充は「お、なんだ。褒め殺しか?」と笑うと手を伸ばし、クシャクシャと頭を撫でてきた。
そしてお互い目が合うと照れくさそうにクスクスと笑ってから、彼は窓の外を眺め「そろそろ着くな」と呟いた。
連れて来られたのはアリススプリングスの中心部にある大型ホテル。どうやら結城の所有する宿泊施設のようだ。
充に呼ばれるがまま付いていけば、そのまま最上階まで直行のエレベーターに乗せられる。
「毎日世界のあっちこっち飛び回ってるからなー。宿泊拠点を決めて各国のホテルの最上階に俺専用の部屋を作らせてあるんだ。んで、オーストラリア北部のときはここ。まあ、別宅みたいなもんだ」
「はあ……」
彼の生活がジョークみたいな豪華さなのも相変わらずのようだ。仕事先での宿泊とはいえ、各国ホテルの最上階を私邸にしてしまうのだから、たとえ次期後継者じゃなくなったとしても御曹司さまの威光はちっとも衰えていない。
けれど、アキスミンスターのカーペットが敷かれた廊下を歩き中央の扉にカードキーを差し込みながら言った充の言葉に、私は心臓をドキリと跳ねさせてしまう。
「とりあえず、オーストラリアにいる間はここが俺と灯里の住処だからな」
てっきりそれぞれ別室が用意されてると思っていたのに、まさか一緒の部屋で暮らすなんて。
狼狽してしまった私だけど……部屋の中に入って、彼の意図を理解した。