ワンルームで御曹司を飼う方法
ポロポロと涙を零す私に充は手を伸ばすと、そうっと抱きしめてくれた。さよならの夜のペットセラピーと同じ、癒し包んでくれる温かい包容。
けれど、今はそれだけじゃなく。
「当たり前だろ。世界中何処へ行ったってずっと一緒だから。ワンルームで側にいる事がどんなに心地好いか教えたのは灯里なんだから、責任とれよ」
密着した身体から響く優しくて温かい声に、胸がどうしようもなく高鳴っていく。響いているのはきっと、自分の鼓動と重なるもうひとつの鼓動。
充は抱きしめていた手を解くと、私の髪を指先で梳いてから頬を包む。
そして――近付いてくる彼の顔に、静かに目を閉じたときだった。
「あ、ちょっと待った」
「え」
充は一旦身体を離しポケットから携帯端末を取り出すといきなり誰かと喋り出す。
「おい、これからイイことするんだから部屋の監視カメラ止めろ。マイクも。バイタルも計るなよ、恥ずかしいから」
ま、まさかの恥ずかし過ぎる指示に、私は呆気にとられたまま顔を真っ赤にする。
充は通話を切ると端末をポケットに押し込みながら、平気そうな顔で再びこちらに向き直った。
「やっぱ後継者じゃないって最高だな。前だったら絶対に監視止めてもらえなかったもん。自由でいいなー。さ、続きしよ」
やっぱり御曹司さまは御曹司さまだ。止めてくれるようになったとはいえ、基本監視される日々は継続中のようで。私は今さらながら焦ってキョロキョロと部屋を見回してしまう。
そして目に付いたのはキングサイズのダブルベッド……室内にひとつしかない寝床と、充の指示以外は監視されている状況を色々考え、血液が沸騰するほど私は頭を熱くしてしまう。
「ほら、灯里。続き、続き」
平然と気を取り直し抱きしめてくる充だったけれど、こっちはもう茹でダコ並みに顔が熱くて真っ赤だ。