ワンルームで御曹司を飼う方法
「ちょっと待って!これ、本当に見られてませんよね?ていうか……わ、私、夜はソファーで寝ますから!」
「なに心配してるんだよ、大丈夫だって。まあ、もし監視されてたとしても、見られるぐらいいいんじゃね?前みたいに邪魔が入るワケじゃないし」
「全っ然良くありません!ファーストキスが観衆公開だなんて、恥ずかしすぎて死んじゃいます!」
「えっ。灯里、ファーストキスなの?その歳で?うわ、フツーなら引くけど、灯里なら逆に嬉しいかも」
ジタバタと抵抗する私を悠々と抱きしめながら、充はケラケラと楽しそうに笑ってさりげなく失礼な事を口にする。
けれど結局、唇は強引に重ねられ……私たちは長い年月を経て、通じ合った想いをようやく行動にすることが出来た。
ずっとずっと隠し続けて閉じ込めていた想いは、初めて異性として触れ合ったことでようやく成就し、たまらない愛しさを込み上げさせる。
強引に重ねられたけれど、充のキスは想いの丈をいっぱいに籠めた丁寧で優しいもので。それを受け留めて私も全ての想いを籠めて彼の身体を抱きしめる。
「……充……」
ゆっくりと離された唇が無意識に彼の名前を紡げば、愛しげに微笑まれもう一度軽いキスを落とされた。
「好きだよ、灯里」
とても短い愛の言葉だけれど、きっと充にとっては紡ぎたくても紡げなかった世界で一番難しい言葉だったと思う。
私は彼の頬を優しく撫でると、今度は自分からそっとキスをした。
「帰ってきてくれてありがとう、充」
充は嬉しそうにそれを受け留めて、自分の気持ちに正直に私を抱きしめる。
ふたりが新しい関係を始めるワンルームから見える空は広大で、どこまでもどこまでも続いている気がした。
高く天まで青が広がるその空を、小さな鳥が羽ばたいていく。自由に羽を広げ、まるで未来のように果てしない空へ帰っていくように。
その光景を眩しく眺め、私は誓う。
私はいつだってどこだって、自由に羽ばたく充の帰る場所になろう、と。大きな翼で未来に向かって飛び続ける彼が、安心して羽を休められるように。
そんな想いで眺めた空は、祝福のように眩い光が雄大な空に降り注いでいた。
fin
――宗根灯里流、ペットの飼い方
・貧しくても美味しい餌を毎日与える事
・寝床のしつけは最初に厳しく
・弱っている時は優しく献身的に
・どんなワガママなペットにも、たっぷりの愛情を注いであげましょう