ワンルームで御曹司を飼う方法


『もう!今回は無事だったから良かったものの、見ず知らずの男を泊めるなんて二度としちゃダメだよ』

 案の定イサミちゃんにはそんな風に叱られてしまい、私は電話のこちら側で苦笑いを零す。

「うん、もう二度としない。て言うか二度とあって欲しくないよ、こんな事」

 反省する気持ちもあるけれど、そもそも見知らぬ男性が転がり込んでくる事なんて本来ありえない出来事なのだ。私はこんな異常事態が二度と起きないよう心の底から真剣に祈る。けれど。

『二度とないといいんだけどね』

 電話の向こうでイサミちゃんはどこか不吉な口調でそんな事を言うではないか。

「な、何?どういうこと?」

『灯里ってば、その自称社長にまんまと一泊二食つきの好待遇しちゃったんでしょ。野良犬ってのは1度エサを与えると味を占めてしつこくなつくモノなんだから。また来るかもね、その社長』

「ええっ!?そんな!」

 イサミちゃんてば、なんておっかない予言をするの。けれど言い得て妙なその発言に、私は額に嫌な汗を滲ませる。

「でも、一泊だけって昨日言ってたし」

『どうかなあ。相手は常識の破綻してる人なんでしょ?油断ならないよ』

 うわー。言われれば言われるほど嫌な予感がする。私は急に不安になって涙目になりながら必死で首を横に振った。

「恐いこと言わないでよイサミちゃん。それに社長、台湾に行くって言ってたからきっとしばらく帰って来ないし」

『ああゴメン、脅かすつもりじゃないの。でも万が一の事も考えて気を付けてなよね』

 気を付けるったって……あの社長相手に私が出来る太刀打ちなんか居留守くらいしか思いつかない。不安で途方にくれてしまった私だけど、イサミちゃんが『じゃあ、そろそろ切るね』と会話を切り上げようとしてのを聞いて、慌てて電話に向かって付け足した。

「あ、まってイサミちゃん。あの……蓮には社長が泊まっちゃったこと言わないで欲しいの」
 
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