ワンルームで御曹司を飼う方法
「おいジジイ。俺、間違ってないよな」
――『Y‐Connect』プロジェクトが動き出した日。俺は最低限の警護と秘書だけつれてジジイの墓参りに来た。
結城財閥の第一後継者だけが入れる記念碑並みに馬鹿でかい墓。いずれは自分もここに納まるもんだと思っていたけど、どうやらジジイと同じ石碑に名前が刻まれる事はもうないようだ。
ジジイの好きだったサルビアの花を供え手を合わせていると、昔のことが思い出される。
『充。お前は結城一族の中でも経営者……いや、指導者としての才能がずば抜けている。お前は必ず結城コンツェルンを、もしかしたらそれ以上に大きなものを導ける男になるはずだ。ワシの目に狂いはない』
幼い頃から何度も繰り返された言葉。俺を見て誇らしげに笑うジジイの顔がまるで昨日の事のようにハッキリと記憶の中で蘇る。
「うん、やっぱ俺間違ってねえな。それにあんたの目も間違ってなかったよ」
改めて確信を得た俺は踵を返し歩き出した。
見上げた空は青く澄み渡っていて、この空が世界中に、眩い未来に繋がっているのだと思うと、子供のように胸がワクワクした。
***
夜が明けはじめたオーストラリアの空は鮮やかなブルーに眩い朝日が輝いていて、いつか見上げた空を思い出す。
灯里より先に目覚めてしまった俺は、ホテル最上階の窓から景色を眺めボンヤリとこの三年間を振り返っていた。
まだまだ大変なことも面白いことも始まったばかりだけど、とりあえず一番大切なものを手に入れられたことだけは自分を安心させてやりたい。
俺の人生を大きく塗り替えてしまった存在は、こちらに身体を寄せながら静かに寝息をたてている。
無防備にさらけ出されている素肌の肩にシーツを掛け直してやると、俺はそのまま彼女の髪を指で梳いた。