ワンルームで御曹司を飼う方法
・おまけ
【おまけ・パーティー後夜】
※別作品『御曹司さまは政略結婚がお好き』の『御曹司さまは一番になりたい』の後のお話しです。
その夜、充がホテルに帰ってきたのは、予定よりも二時間近く遅い深夜のことだった。
「あれ、起きてたのか?」
ベッドに腰掛けてタブレットを見ていた私を目にして、扉を開けるなり充が驚いたように言う。
「うん。先に寝てようと思ったんだけど、なんだか目が冴えちゃって」
そう答えて私は見ていたY-connectの活動記録のページを閉じ、タブレットを置いてベッドから立ち上がった。
充は脱いだジャケットをハンガーに掛けると、まっすぐこちらへ向かってきて私を腕の中に包む。
「ただいま。遅くなって悪かったな」
「おかえりなさい。……お疲れ様」
少しだけ迷って、私はおかえりなさいの後に労いの言葉を付け足した。
今日の充は弟である颯さんの婚約発表パーティーに出席してきた。家族と顔を合わせに行ったのに「お疲れ様」はビジネスライク過ぎただろうかと、すぐに後悔する。
けれど私はきっと、彼の帰宅が遅くなった理由が私的なものではなくビジネス的なものだと信じたかったのだと思う。
――颯さんの婚約相手は、かつて充の婚約者だった人だ。
一、二度しか顔を合わせたことがないと充は言っていたけれど、仮にも一度は結婚の約束をしていた女性と自分の恋人が会いに行くのに、心穏やかでいられる人間がこの世にどれほどいるのだろうか。
※別作品『御曹司さまは政略結婚がお好き』の『御曹司さまは一番になりたい』の後のお話しです。
その夜、充がホテルに帰ってきたのは、予定よりも二時間近く遅い深夜のことだった。
「あれ、起きてたのか?」
ベッドに腰掛けてタブレットを見ていた私を目にして、扉を開けるなり充が驚いたように言う。
「うん。先に寝てようと思ったんだけど、なんだか目が冴えちゃって」
そう答えて私は見ていたY-connectの活動記録のページを閉じ、タブレットを置いてベッドから立ち上がった。
充は脱いだジャケットをハンガーに掛けると、まっすぐこちらへ向かってきて私を腕の中に包む。
「ただいま。遅くなって悪かったな」
「おかえりなさい。……お疲れ様」
少しだけ迷って、私はおかえりなさいの後に労いの言葉を付け足した。
今日の充は弟である颯さんの婚約発表パーティーに出席してきた。家族と顔を合わせに行ったのに「お疲れ様」はビジネスライク過ぎただろうかと、すぐに後悔する。
けれど私はきっと、彼の帰宅が遅くなった理由が私的なものではなくビジネス的なものだと信じたかったのだと思う。
――颯さんの婚約相手は、かつて充の婚約者だった人だ。
一、二度しか顔を合わせたことがないと充は言っていたけれど、仮にも一度は結婚の約束をしていた女性と自分の恋人が会いに行くのに、心穏やかでいられる人間がこの世にどれほどいるのだろうか。